春い青⑩
- 2020/05/02
- 04:47
ヌル男「はあはあ、なかなか負ぶって走るのは大変だ」
バキューーーーンッ
ヌル男「ひぃ、拳銃?このままじゃ・・」
じじい「ち、外したか・・わしから逃げられると思うなよ?」
じじい「この森はわしの庭みたいなもんじゃからのう、目隠ししてでも歩けるわ」
ヌル男「このままじゃ逃げきれない・・うるはさん、ここに隠れていて」
ヌル男「僕が反対側に注意を引けば、目覚めるまで時間が稼げる!」
ヌル男「君だけは助かってくれ、マイハニー!」
チュッ
ヌル男「おーい、こっちだボケ老人!膝でも痛むのかw」
じじい「ふぉふぉふぉ、馬鹿が!そっちは袋小路とも知らずに」
ズンズンズンズン・・・
じじい「どこに隠れとる?小僧ー!」
ヌル男(一か八かの大勝負だ・・)
コツンッガサガサ・・
じじい「ぬ?」
じじい「そこかーーー!」
スチャッ
じいい「とみせかけてこっちか!」
バキュンッ
ヌル男「かかったな!」
ヌル男「くらえーーーーー!!」
じいい「ぬああああああああああ!?」
ヌル男「おかしい・・電気が出ない!」
じじい「おいおい、どうした」
ジロリッ
じじい「バッテリーが0ではないか、さっき出力をMAXで使ったからだ・・」
ヌル男「そうか、なるほど」
じじい「ってこのガキ、味な真似をしおって!」
ガンッ
ヌル男「ぐぁっ」
じじい「そのキモメンをグロメンに変えてやらんと気が済まん!」
ヌル男「ぎゃーーーー」
ガンガンッ
じじい「はあはあ、思い知ったか小僧」
ヌル男「ううう・・」
じじい「最後に聞いておこう・・なぜ女を抱かずに、わしに逆らった?」
じじい「一生女を抱けぬかもしれん貴様に、わしはチャンスをくれてやったのだぞ!」
ヌル男「ふふ・・」
ヌル男「僕は、いつかきっとうるはさんに認めてもらうんだ・・無理やりものにしたって何の意味も無い」
じじい「!?」
ヌル男「それが分からないあんたは、誰も人を愛したことが無いんだろうね!」
じじい「ぬうう・・いちいち癪に障る奴っ」
じいい「もうよい、脳漿ぶちまけろ!」
ヌル男(これまでか・・)
うるは「お前だ」
バキィッ
じじい「!?」
ズシャアッ
じじい「グハァ!」
うるは「ヌル男、顔に似合わず格好よかったぞ!」
ヌル男「うるはさん、やっと目が覚めたんだ・・」
うるは「いや、大分前から起きていたけど」
ヌル男「え?」
うるは「お前が必至過ぎるのが面白くてな。寝たふりしてたんだ」
ヌル男「うるはさん、酷いよ・・」
じじい「いちゃついている場合か、クソガキども・・」
うるは「お、立てるのか?」
じじい「これでも一時は名を馳せた武闘派ゲリラじゃ。なめられては困るわ」
うるは「ただのじじいじゃないみたいだね!」
「それはかつて昭和の時代・・わしは若者らしい希望を胸に、仲間を率いて武力革命を指揮していた」
「ところが・・組織の拠点となったわしの別荘で、仲間たちは乱交しかせなんだ!奴らは結局、夢や革命などどうでもよかったんじゃ!」
「失望と怒りに震えたわしは、権力に向けるはずだった銃を、仲間たちにぶっ放した。全員跡形も無くなるまでな・・」
じじい「その別荘が今でもわしの家、奴らを葬ったのがこの森というわけだ!ぐははは」
うるは「自分の理想なんかの為に、大事な仲間をやっちまったのか。つくづく憐れなじじいだな」
じいい「黙れ、貴様らにわしの孤独が分かってたまるか!」
ドギュドギュドギュッ
うるは「はぁっ!」
ビビビッ
じじい「!?」
じじい「小娘、弾をどうやって止めた?」
うるは「飛んできた弾を指でつまんだだけだ」
じじい「そんなことができるか・・これはきっと夢だ!」
うるは「その銃、あと一発残ってるぞ」
うるは「この世が夢と思うなら、自分を撃ってみたらどうだ?お前は残念過ぎて、手を下す気にもなれない」
じじい「はあはは、はははh・・ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・・・」
うるは「いこうぜ、ヌル男」
ヌル男「う、うん・・」
<続く>