紅葉の拳⑥ ~殉愛~
- 2017/01/15
- 00:22
平日の午後、仲良く帰宅中。
紅葉「それでその芸人がさー・・」
毬井「マジで?」
紅葉「ん、なんだろ」
紅葉「鍛える道具かな」
毬井「なんかバッチくない?」
謎の男「とう!」
ズボァッ
2人「ひっ!」
謎の男「それに目を付けるとは、お目が高いね!」
バンッ!
謎の男「おさげの君の言う通り、それはディップバーという筋トレマシンだよ」
毬井「いきなり何ですかあなたは!」
謎の男「通りすがりの粗大ごみハンター、見野明隆(みのあきたか)さ」
見野「この町は富豪が多いから、全く使っていない高級品が多く捨てられるのさ」
見野「君らさえ良ければ、すごい拾いものをたくさん見せるけど?」
紅葉「面白そうだね」
毬井「ちょっ、この人絶対ヤバイって!」
紅葉「人を見かけで判断するのはよくないと思うな!」
毬井「そりゃそうだけど・・」
紅葉「ぜひ拝見したいです!」
見野「よし、美味しいお茶も用意するよ」
毬井「ちょっとぉ~・・」
紅葉「私は霧生紅葉です!あの子は・・」
毬井(変な真似したらやっつけてやる!)
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毬井(まさか下水道を通るなんて・・)
毬井「げっ、ドブネズミ・・」
紅葉「おっきいですね!」
見野「よく見ればかわいいよ」
見野「さあ、ここが僕のねぐらさ!」
2人「おお!」
ドオオォォォォオオォオン
毬井「生活道具がそろってる!」
紅葉「それに広いです!」
見野「お茶入れるから、座って待っててね」
ギッシギッシ
紅葉「高級なソファーだ!」
毬井「・・モミモミ、ちょっと耳かして」
毬井「何か食べ物出されても、一切口にしちゃ駄目だから」
紅葉「えー、折角用意してくれるのに・・」
毬井「何企んでるか分からないでしょ!」
見野「お待ち遠様!」
ぬっ
毬井「うぉぉびっくりした!」
見野「拾いものだけど衛生的に問題ないから、安心して食べてね」
毬井「折角ですが、私たちおなか壊してますから!」
紅葉「おいひい・・ムシャムシャ」
毬井「ちょっ!」
見野「一つ花子君に問題。お店で売れ残った食品はどうするでしょう?」
毬井「そんなの簡っ単!」
毬井「店員さんが山分けするんです!もったいないから!」
紅葉「さすが花子ちゃん・・ずずず」
見野「ブ―不正解!理想的な回答だけど、現実はそうじゃない」
見野「食べ物の約40パーセントは、新品のまま・消費期限内に捨てられているのさ」
2人「えーーー!?」
見野「もったいなくても処分しなきゃ、生産者さんにお金が回らないだろ?社会の大きな欠点さ」
紅葉(生産者さんが頑張って作ったのに・・)
毬井(調理師さんが頑張って作ったのに・・)
見野「そんな食べ物を在り難く食べることは、多少の供養になるかもね」
毬井「確かに・・」
紅葉「生産者さん・・!ぐす」
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謎の男「さあ、腹も満たされたところで拾ったものを披露しよう!」
紅葉「待ってました!」
ドンッ!
「今朝捨てられてたんだ。この金額は驚いたよ」
毬井「どうして捨てる必要が!?」
紅葉「理解できません!」
見野「タンス預金をうっかり・・なんてことはあったけどね」
バンッ!
見野「これも、お金と同じところで拾ったんだよ」
2人「おお!」
毬井「凄いガトリングガン!持ち方がわからないw」
紅葉「ものすごい刃です!」
毬井「憧れのデリンジャー!かわいい!」
見野「欲しければ持って行っていいよ」
紅葉「私はこれが欲しいです!」
謎の男「残念だけど、それ持ち歩いたらすぐ掴まっちゃうよ」
ハッスルハッスル!
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毬井「お邪魔いたしました」
紅葉「見野さんまたね!」
毬井「変わった人だけど、悪い人じゃなかったね」
紅葉「でしょ!」
ドゥルルン
蹴井豆花(けりいまめか):新人SBポリス。狙撃と肉弾戦が得意。
在谷路子(ありしやみちこ):新人SBポリス。運転・メカが得意。
蹴井「仲良さそうだな」
在谷「無駄に職質したいね」
在谷「ごきげんよう、お嬢さんたち」
紅葉「SBポリスのお姉さん!」
毬井(ぎくっ!)
蹴井(おっと、あのお嬢ちゃん何かあるな・・)
蹴井「最近ここらでちょっとした事件があってね」
在谷「お話聞かせてくれる?」
在谷「あなたたちSB学園ね?」
紅葉「そうです・・すりすり」
蹴井「なんか大事そうにバッグ持ってるじゃん?」
毬井「何も隠してません!」
蹴井「嘘をついている味がする・・ペロペロ」
毬井「ああああ!」
蹴井「在谷、持ち物検査!」
毬井「ダメ―!」
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藤堂署長:SB警察署長。
藤堂「デリンジャーか・・JKのおもちゃにしては、たちが悪いわね」
藤堂「当署の武器庫から紛失したウェポンに間違いないけれど」
毬井「ゴミ置き場に落ちてたのを拾っただけなんです!(実際そうだし)」
藤堂「まあ、今回はあなたを信用しましょう。没収だけで許してあげる」
藤堂「変なものに興味を持たないで、勉学なさい」
2人「すみませんでした」
藤堂(あの子たちを尾行なさい)
在谷(ウイ、マダム)
毬井「私のせいで、おじさんに迷惑かかっちゃう!」
在谷「あの古典的な土管の中だね」
蹴井「なんか懐かしいな」
蹴井「にしてもお前さん、その年でセーラー服は不自然だろ」
在谷「な!」
在谷「同い年でしょ、このクソビッチ!」
蹴井「なにぉ・・」
謎の巡査「ずっと揉めてろ、馬鹿ポリスどもめ!」
キュウキュウキュウ←土管に入る音
「はあ、はあ、はあ・・」
横流稼頭央(よこながれかずお):若くして悪に染まった巡査
「ゴミ捨て場を取引の場に利用したのが間違いだったぜ!」
「証拠諸共吹っ飛ばしてやらないと、必ず俺に足が付く・・」
「流石の俺も、署長の拷問に堪えられる自信はねえ!」
2人「見野さん!」
見野「ん、君たちか」
毬井「ごめんなささい、もらったピストルがばれちゃって・・」
紅葉「ポリスに見つかって大変でした!」
見野「いや、僕の責任だ。ちゃんと警察に話すよ」
横流「その必要はねえ!」
横流「てめえのお陰で、大事な取引がすべてご破算だぜ」
見野「なるほど、君がゴミ捨て場を闇の取引に・・」
横流「誰がしゃべっていーっつった!」
横流「3人とも両手を上げて、ピアノのところに行け。鉛玉ぶち込まれたくなかったらなぁ!」
見野「この子たちには手を出さないでくれ」
横流(残念だが、いじめを楽しんでる時間はねえ・・)
ブチッ←手榴弾のピンを抜く音
横流「3人仲良くあの世へ行きなぁ!」
ブンッ
手榴弾がアーチを描くように投げられたのは・・
投げた横流が、安全な場所に非難する為である。
並の人間なら、その絶望的状況に判断力を失うが、
2人「もう駄目・・!」
見野だけは一瞬の好機を見逃さず、反射的に刀を抜いいてた。
意外にも、両手に構えたのは刃ではなく、鞘である。
少年時代の草野球しか経験のない彼であったが、
そのスイングは手榴弾の芯を正確にとらえていた。
「チェスト!」
カキーーー――――ンッ!
野見の放った「漆黒の打球」は、横流の眼前へと舞い戻った。
横流(うっそ・・)
(やるじゃない)
見野「逃げるよ、君たち!」
毬井「見野さん!」
紅葉「格好いいですw」
ドゴォオオオオォォォォォォン!
3人「あああああああああああああああああああああああああ!」
メラメラメラ・・
見野「危ないところだった・・!」
紅葉「・・死んじゃったのかな?」
毬井「あんなのくらっちゃ、とても・・」
見野「いや、」
見野「まだ息がある!早く救急車を!」
二人「はい!」
ギンッ!
横流「うるぁ!」
ドゴッ
見野「ぐはあ!」
横流「舐めた真似したがって、このビチグソがぁ・・」
横流「その首かっサバいてや・・」
ズパ――――――ンッ
「!」
横流「ぶべらっ」
紅葉「だいじょぶですかw」
見野「紅葉くん!」
毬井「伝家の宝刀、マリィスタンプ!」
横流「ひいぃぃ」
毬井「砂鉄120%増量!」
にやりっ
毬井「成敗!」
ズドンッ
横流「ひでぶ!」
紅葉「見野さん、決めて!」
見野「応!」
ブンッ!
毬井「跳んだ・・」
二人「た、高い・・!」
ゴオオオォォォォォォ
見野「宇宙の塵となれ!」
見野「タイガーコメット!」
ズドオオオオォォォォン
横流「うげぇ」
メキメキメキ・・
見野「全ての肋骨が粉砕された・・これで二度と立ち上がれまい」
蹴井「SBポリス、遅れて参上!」
在谷「とりあえず、全員逮捕~!」
紅葉「せいとうぼうえいです!」
毬井「また逮捕・・」
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紅葉「早く解放されてよかったね」
見野「まあ、何も悪いことしてないからね」
毬井「にしても・・」
毬井「なんでポリスのお二人が居るんですか!」
在谷「ん・・憧れの人に会うためだけど」
見野「!」
蹴井「うちらはずっとアンタを探していたんですよ、”タイガーマウス”・・」
蹴井「あれは5年前・・アンタの20度目の防衛戦だったな」
”おおっとタイガーマウス、ノーモーションのソバットがさく裂!”
在谷「鬼の強さとフェアプレー精神は、私たちの憧れの的だったわ」
蹴井「二人で小遣いをはたいて、アンタの試合はほとんど観に行ったぜ」
蹴井「悲劇は試合後半に起きた。相手に花を持たせようと、アンタがスリーパーをあえて受けたとき・・」
在谷「マスクが外れて、素顔がスクリーンでさらされたのね」
”おいおい、どうなってんだこりゃ”
”ざわざわ・・ざわざわ・・”
蹴井「以降、タイガーはうずくまってやられっぱなし。そりゃあもう惨めな姿だった」
在谷「当然、会場はブーイングの嵐」
”失望したぜタイガー!”
”彼はもう終わりだな”
蹴井「うちらは悔しいんだか恥ずかしいんだかで、泣きながら会場を出た」
在谷「その試合後、タイガーマウスは姿を消したのよ」
見野「本当にすまない、私がダサいばかりに・・!」
蹴井「ダサイのはアンタの気弱な心だよ!」
在谷「立ち直って、もう一度試合をしてよ!」
見野「しかし・・」
紅葉「私からもお願いします!」ぎゅっ
毬井「最前席で応援するから!」むにゅっ
見野「おお・・!」
在谷「ちょっ、ハニートラップなんて卑怯よ!」
蹴井「うちらも続くぜ!」
見野「待ちたまえ君たち!」
ぎゅっ!
ぴちゃぴちゃレロレロ・・・
ぶちゅ~~~~~~~~~~
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見野「いやぁ完全に吹っ切れたよ!うじうじ悩んでいたのが馬鹿みたいだ」
蹴井「それじゃあ、」
在谷「やってくれるのね!」
見野「僕はもう一度、この顔でリングに上がり頂点を目指す!!」
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数か月後、タイガーマウスは素顔のまま復帰。鬼神の強さで決勝を迎えた。
”おおっとカーフブランディングがさく裂!”
毬井「あーもう我慢できない!」
紅葉「花子ちゃん!」
毬井「タイガー、いくよ!」
見野「花子君!」
”おおーっと謎のJKが乱入だ―!”
グシャッ!
”Wアックスボンバー!”
タイガーは再び王者に返り咲き、花子は3日の停学となった。
~完~